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パティさん斬首事件裁判:ネット上で攻撃の生徒父親らに厳しい判決

中学教諭サミュエル・パティさんがイスラム過激派により斬首された事件(2020年10月)の裁判で、パリ特別重罪院は20日、すべての被告人に有罪判決を言い渡した。求刑よりも厳しい量刑となった。

この事件では、パティさんが放課後、学校付近でチェチェン出身のイスラム過激派の男性アンゾロフにより殺害された。アンゾロフは事件直後に警官隊により射殺された。パティさんは社会科の教員で、表現の自由に関する授業の一環として、シャルリーエブド襲撃事件のきっかけになった預言者ムハンマドの戯画のいくつかを見せたが、この件について女生徒の一人が両親に虚偽の報告をしたのが発端となり、女生徒の父親らが熱心にSNS上でパティさんを攻撃するキャンペーンを展開。結果としてアンゾロフによる犯行に至った。裁判では、事件に関係した様々な被告人の責任が問われた。

裁判所は、アンゾロフの武器調達に協力した2人の友人について、「テロ共犯」という求刑よりも厳しい罪状を採用し、禁固16年の有罪判決を言い渡した。また、SNS上でアンゾロフとつながりがあった4人(犯行声明の流布に協力した者も含む)には、関与の度合に応じて、禁固1年から禁固5年(うち30ヵ月が執行猶予付き)までの有罪判決が言い渡された。パティさんを攻撃するキャンペーンを展開したシュニナ被告人(虚偽の報告をした女生徒の父親)と、それに協力していたイスラム教原理主義活動家のセフリウイ被告人には、「テログループへの協力」の罪状で、それぞれ禁固13年と禁固15年の有罪判決が下された。これは、求刑よりも3年多い厳しい量刑となった。シュニナ被告人とセフリウイ被告人は共に、殺害を呼びかけたわけではなく、テロ行為を引き起こす意図があったことも証明されていないと主張したが、裁判所は、当時の状況を鑑みて、個人にリスクを負わせるキャンペーンを展開するという行為は、それが実際にテロを引き起こしたのであれば、テロ協力に相当するとの判断を示し、厳しい有罪判決を下した。セフリウイ被告人は、表現の自由を侵害する政治的な判決だなどと主張し、控訴する考えを明らかにした。