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第九回:がん検診のお話

今回はがん検診についてお話させてください。

一口に「がん」といっても人間には多種多様の臓器が存在し、その臓器の種類だけがんの種類がある といっても過言ではありません。そしてその悪性度もピンキリで、皮膚基底細胞がんのように生存率ほぼ100%のものから膵臓がんのように5年生存率が5% という恐ろしいものも存在します。しかし、皮膚も膵臓も通常の「がん検診対象臓器」には含まれておりません。皮膚はともかくとして、なぜ膵臓も含まれてい ないのでしょうか?

「検診」は多くの人(理想的には全国民)に利用可能で、しかもそれを受けたことによって利益がも たらされる(寿命が延びる)ことが必要です。いくら優秀な検査機器でも一人当たり1億円もかかるようなら検診に使えないし、検査自体が有害な場合も使えま せん。胃がんを発見するために行われるバリウム検査は通常40歳以上が対象者ですが、ただ単に心配だからといって20歳から受けていては放射線被爆による 害の方が大きくなってしまうかもしれません。膵臓はエコーやCT、MRIなどで観察できます。エコーは無害で比較的安価ですが、腸内のガスや皮下脂肪など で見えにくいことも多く、CTは放射線被爆の問題、MRIは時間とコストがかかります。それでも、仮に膵臓がんが胃がんや肺がんのように頻度の高いがんな らば例えば「5年に1回CTを受けましょう」などと規定されるのでしょうが、それほど頻度も高くないので、現在までの研究では膵臓がんを早期発見し、しか も不特定多数の人が利用できる決定的メソッドがないのです。しかし医療機器も急速に進化しており、将来的には膵臓も検診対象臓器に入る可能性もあります。

検診における「一般対象者」は「平均的なリスクを持った無症状の人」です。たとえば乳がんの検診 対象者は原則として40歳以上ですが、胸にしこりのある人や母親が若くして乳がんになっていたりする場合はその原則が当てはまりません。しこりのある人は 年齢に関係なく直ぐに受診すべきだし、強い家族歴のある人は受診開始年齢を若くすべきです。(ただし、逆に親戚でがんになった人が誰もいないからといって 受診開始年齢が上がったりすることはありません。)

このように「どの臓器」を「何歳」から調べればよいかはその臓器がんの「頻度」「悪性度」と「調 べやすさ」などによって規定されます。以下に「日本で一般的」な検診対象臓器と検診開始年齢を示します。(学会や地域によって規定が異なることもありま す。)特に胃がんは日本では高頻度に見られるため要注意です。

  1. 子宮頸がん   20歳以上の女性で隔年(欧米では毎年)
  2. 乳がん     40歳以上の女性で隔年
  3. 胃がん     40歳以上で毎年(欧米では頻度が低く、規定なし)
  4. 肺がん     40歳以上で毎年
  5. 大腸がん    40歳以上で毎年(米国では50歳以上10年毎に内視鏡)
  6. 前立腺がん   50歳以上で毎年 

がんは早期発見すれば治す事ができる場合が多いです。がん検診はできるだけ受けるようにしましょう。

 

追記

 

前回予防接種についてお話させていただきました。フランスに駐在されている方はアフリカや東欧などに出張されることもあるかと存じます。その際どのような予防接種を受けておけばよいか、以下のサイトが参考になります。
http://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/list.aspx
米国疾病予防センターという信頼の置ける機関が公開しています。行き先の国名をクリックすれば何の予防接種が必要かが書いてあります。

三村 佳弘 先生

三村 佳弘
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