銀行・証券・保険:藤澤 宏一/三菱UFJ銀行 パリ支店

新年明けましておめでとうございます。

年頭にあたり、在仏日本商工会議所会員各社の益々のご繁栄、並びに会員各位及びそのご家族のご健勝をお祈り申し上げます。

 

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2019年の世界経済は製造業を中心に調整色の強い展開となりました。12月には英国のEU離脱と米中貿易交渉の進展で安心感が若干広がったものの、下表の通り、各地において2019年は2018年に比べて減速傾向を示しています。

要因としては、①グローバルな製造業の景気循環(2016年後半~2017年の景気好調の反動継続)、②米中対立、英国のEU離脱、中東情勢など政治・政策要因に絡む不透明感(サプライチェーンへの影響に対する懸念も含まれます)、③過剰債務削減等に伴う中国の投資主導景気の減速、④自動車の排ガス規制強化による世界的な販売下押し、などの要因が複合的に重なったものであり、製造業がその影響を受けていると解釈されています。

一方、製造業の不振が非製造業にまで拡大して景気全体の後退に至らせる展開は見られておらず、減速は長期化しているものの、多くの国で個人消費を中心に内需が底堅く推移して景気の底割れを防いでいる状況です(2019年にマイナス成長となった国・地域は香港やアルゼンチンなど限定的と見られています)。

 

<主要国・地域の実質GDP成長率>

2018年 実績

世界 全体 ユーロ圏 フランス ドイツ イタリア イギリス アメリカ  日本 中国 中東・ 北アフリカ サブサハラ・アフリカ
+3.6% +1.9% +1.7% +1.5% +0.9% +1.4% +2.9% +0.7% +6.6% +1.1% +3.2%

 

2019年 着地予想

世界 全体 ユーロ圏 フランス ドイツ イタリア イギリス アメリカ  日本 中国 中東・ 北アフリカ サブサハラ・アフリカ
+3.0% +1.2% +1.3% +0.5% +0.2% +1.3% +2.3% +0.7% +6.1% +0.1% +3.2%

(注)2019年着地予想:弊行作成。中東・北アフリカとサブサハラアフリカはIMF見通し。

 

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2020年の世界経済を見通す際に鍵になると考えられる主な項目を以下に列挙させて頂きます。皆様の論点整理の一助になれば幸甚です。

 

米中関係:昨年12月に米中貿易交渉の「第1段階の合意」に達しましたが、従来の貿易不均衡、技術覇権、安全保障等の諸問題に加え、香港情勢も絡んだ人権問題も取り上げられつつあります。国のあり方をめぐる対立の様相を呈しており、対立は長期化・常態化する可能性もあります。

米国の通商政策:トランプ政権の手法への予見は難しく、新NAFTAある米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)への米国での批准も不確定要因のまま。中国に加えて、欧州とも自動車・航空・デジタルなどでの課税問題の萌芽を抱えていることはご高尚の通りです。

中国の投資動向:企業部門や不動産分野の過剰投資・過剰債務構造を考えれば引き続き減速傾向を辿り、かつてのような世界経済の牽引役を期待するのは難しいと思われます。但し、対米通商摩擦の影響での景気減速が及んでいるのは沿海部や外資系企業であり、広大な中国を画一的に捉えるのは適切では無いと考えられます。

自動車排ガス規制:特に欧州等では地球温暖化問題に対する世論や当局の関心次第で更に厳格化する可能性もあります。

2020年米大統領選挙:民主党の大統領候補が定まっておらず、トランプ大統領優位との見方が多いですが、選挙人多数の州でトランプ大統領の支持が伸び悩んでいるとも言われており、現時点で選挙結果を見通すのは極めて難しい状況です。選挙前後で対中強硬姿勢の行方と財政出動の可能性に変化が生じた場合にはマーケットが大きく反応する可能性があると考えられます。

欧州情勢:①英国総選挙の結果を受けて1月末での「合意ありの離脱」がメインシナリオとなり、不透明感の緩和が景気を下支えする可能性がありますが、ジョンソン首相が年末までの移行期間中に新たにEUと通商協定を纏められるか、または協議長期化を見越し7月1日までにEUに移行期間延長を申し入れるかが大きなポイントになります。②域内最大の経済規模を持つドイツの鉱工業生産の落込、自動車等の輸出不振の動向については環境規制の影響も含めて注視が必要です。③欧州の政局不安は各国で依然として燻っており、国単位での政治不安がユーロ圏景気の重石となる可能性にも注意が必要です。

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金融業界全般としては、テクノロジーの進化やAIの活用によって引き続きフィンテックの加速、リブラを含めた仮想通貨の進化が続くものと思われます。欧州をはじめとする世界的な環境意識の高まりにより、グリーンファイナンスやESG投資への注目・ニーズが更に高まることも予想されます。また、世界的な低金利局面は当面続く可能性があります。加えて、金融業界でも各種規制への対応の深化が更に求められることになります。

 

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2020年の干支は「庚子(かのえ・ね/こう・し)」です。

過去の子年を振り返ると総じて景気拡大期にありましたが(1960年池田内閣「国民所得倍増計画」下での好況、1972年田中内閣「日本列島改造論」での積極財政による景気拡大など)、前回の子年である2008年に世界的な金融危機が発生したのは記憶に新しいところです。

十干の「庚」は「前年からのものを継承しつつ、思い切って更新・進化させる」という意味があり、十二支の「子」は「新しい生命が樹脂の内部から芽生える状態」を示しています。「庚子」の字義に照らせば「過去の成果から引き継ぐべきものを継承し、時には改めることで、新たな飛躍へ踏み出す」と解釈されます。

2020年は2度目の東京オリンピックの年。この一大イベントを契機に日本では新たな飛躍へと踏み出すことが出来るか 、また「ポスト安倍」に向け政局に動意が見られるかも大いに注目されます。

皆様にとって「庚子」の2020年が良い一年になりますようお祈り申し上げます。

 

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