ビタミンD
「フランス滞在が長くなるとビタミンDが不足する」という話を聞かれたことはありますか?ビタミンDが不足すると何が問題なのでしょう。日本では問題とならないのでしょうか。
ビタミンDは骨の成長、発達に必要な栄養素の一つで、不足すると骨が脆くなり、骨折のリスクが高まります。それ以外にも、高齢者の転倒や認知機能低下の予防に効果があることが明らかになっており、また、心血管系疾患や悪性腫瘍、免疫系疾患の予防にも効果があるのではないかと言われています。
ビタミンDは鮭、鮪、鰯、鯖等の魚類、肝油、卵黄、乳製品、椎茸等のキノコ類に含まれており、食物から摂取することもできますが、一日に必要な量の約9割は太陽の光(紫外線B波=UVB)を浴びて皮膚で合成されます。
つまり太陽光はビタミンD合成に不可欠ということになりますが、緯度、季節によって日照時間やUVB量が異なり、フランスでは秋冬の間、皮膚でのビタミンD合成が不十分になりやすいと言われています。ある研究では、フランス人がフランスにおいて一日に必要な量のビタミンDを合成するのに7月は一日10分の日光浴で十分なところ、1月は一日130分の日光浴が必要という結果が出たそうです。
最近は日本でも慢性的なビタミンD不足が問題となっており、国民の約8割が不足、約4割が欠乏状態にあると言われています。紫外線を浴び過ぎるとシミやしわ、皮膚癌の原因となることから、太陽光をなるべく浴びないようにする傾向があるのも一因かと思われます。
ビタミンD合成量は、一日の間で日光浴をする時間帯、太陽光を浴びる皮膚面積、UVカット効果のある窓ガラスや日焼け止めクリームの使用、大気汚染の程度によっても変化しますし、高齢の人や皮膚色素量が多い人(有色人種)ほど低下することが知られています。
WHOによりますと、一日に必要な量のビタミンD合成に必要な日光浴の一般的な目安は、週に2~3回、正午頃によく晴れた日は5~15分ほど、曇っている日は30分ほど、両腕と顔とを合わせた面積の皮膚(日焼け止めクリームは塗っていない状態)に日光を照射すること、とされています。秋冬の時期は太陽光を浴びることで季節性うつの予防にもなります。
フランスでは乳製品や油脂の一部に栄養補助としてビタミンDが追加されている商品も出ています。また、成長期のお子さん、65歳以上の方、骨量低下や骨粗鬆症の診断を受けている方など、特にビタミンDを積極的に摂取していただいた方が良いと思われる方は、フランス滞在中、秋冬の間はサプリメントや内服薬を摂取していただくことも必要です。もちろん摂取過多は中毒になりますので、用法用量はよく守ってご使用ください。