CCIJF – 在仏日本商工会議所

風邪と抗生剤

抗生剤もしくは抗生物質とは感染症の治療に使われる薬で、一般的には抗菌薬も同じような意味で使われます。小さな子どもからお年寄りまで処方されることのある薬剤で、抗生剤治療を受けたことがある方も多いと思います。抗生剤を処方されたらどんなことに気を付ければよいのでしょうか。

抗生剤の効かない感染症?
感染症を起こす病原菌はウイルス、細菌、真菌、寄生虫・原虫の4つのグループに分けられます。この中で抗生剤が有効なのは細菌による感染症のみです。ですので細菌以外が原因の感染症にいくら抗生剤を投与しても全く効果はありません。真菌による感染症には抗真菌薬、寄生虫・原虫による感染症には抗寄生虫・原虫薬とそれぞれの病原菌に合った薬剤を使用します。一部のウイルスによる感染症には抗ウイルス薬が存在しますが、大半のウイルスによる感染症には特効薬はありません。私たちの体に備わっている免疫機能が自然とウイルスを排除し、感染症を治癒してくれるのです。
例えば、咳、くしゃみ、鼻水、喉の痛み、発熱などを特徴とするいわゆる「風邪」は多くの場合がウイルスによる感染症で、その確率は大人の場合で約99%と言われています。つまり典型的な風邪の場合、免疫機能のおかげで数日もすれば自然に治癒するのであって、抗生剤が必要となることはほぼ無いのです。ただし、数日経っても症状が改善しない、それどころか悪化する場合は、ウイルスによる感染症の上にさらに細菌が重複感染を起こしている可能性がありますので、抗生剤が必要になる場合があります。速やかにかかりつけ医を受診しましょう。

薬剤耐性
抗生剤の効かない感染症は他にもあります。それは細菌がある種類の抗生剤に対して耐性を生じた場合、つまり本来は有効なはずの抗生剤がその細菌に対して効かなくなるということです。耐性の発達は抗生剤の不必要・不適切な使用によるもので、現在世界的に問題となっています。いざ抗生剤が本当に必要になった際に、耐性のせいで有効な抗生剤が見つからず、満足な治療ができないということもありうるのです。

抗生剤を処方されたら?
もちろん抗生剤による治療が必要な感染症もたくさんあります。抗生剤を処方された場合に大事なのは必ず指示通りに内服するということです。症状が良くなったからと決められた期間を守らずに途中で服用を止めないでください。副作用と思われる症状が出た場合はかかりつけ医に相談し、必要に応じて他の種類の抗生剤を処方してもらってください。また以前に処方された抗生剤の残りを自己判断で服用することは絶対にしないでください。その後医療機関を受診しても、感染症の原因となっている菌がわからなくなり、適切な診断・治療ができなくなってしまうからです。

最後に、最も大切なのは、十分な休息と適度な運動、栄養バランスの取れた食事によって感染症に罹りにくい体を作ること、すなわち良い免疫機能を保つこと、そして手洗いやうがいなど、さらには予防接種による予防です。