第十四回:咳喘息のお話
長引く咳のお話
風邪を引くと咳が出ることは珍しくありません。そして、たいていの場合は1週間以内でほとんど治まります。ところが、この咳が数週間以上にわたって長引く場合あり、しかも夜寝るときにひどくて睡眠の妨げとなることもあります。このように長引く咳の原因は様々ですが、頻度としてもっとも多いとされているのが咳喘息という病気です。一般的な喘息と同様気道が狭くなって起こります。気道が様々な刺激に敏感になっており、炎症を起こします。刺激の種類として、寒暖差、たばこ、過度の飲酒、ストレスやダニやハウスダストなどが挙げられます。 咳喘息では痰や発熱があることは稀で、通常乾いた咳が長く続きます。またのどのイガイガ感や咳のし過ぎで肋骨が痛くなってきたりします。咳喘息では普通の喘息と違って聴診してもヒューヒュー音がせず、また、肺炎と違ってレントゲンも正常です。
その他の長引く咳の原因として、アトピー咳(咳喘息と似ていますが治療法が違います)、副鼻腔気管支症候群(副鼻腔炎や鼻炎を伴い湿った咳が出ます)、胃食道逆流症(胃酸が上にあがってくる病気です)や百日咳(百日咳菌による感染症)などもあります。これらを厳密に区別して、明確な診断をつけていくには様々な検査が必要になりますが、一般的には治療的診断法を使う方が特に忙しい人には向いていると思います。たとえば気管支拡張薬を試しに使ってみて症状が落ち着けば咳喘息の可能性が高くなります。
さて、咳喘息の治療ですが、この気管支拡張薬のほか、ステロイド吸入薬を使います。ステロイドというと、とんでもない恐ろしい薬だと思って拒否反応を示す方もいらっしゃいますが(どういうわけか日本人に多い気がします)、吸入薬は全身的副作用が出ることは稀で、比較的安全にご使用いただけます。治療せずに放置すると本格的な喘息に移行することも有り得るとも言われています。咳喘息の予防としては風邪やインフルエンザになるべくかからないようにし(手洗いなど)、たばこの煙を避けることです。また、ハウスダストなどへの暴露を減らすために家を掃除することも大切です。