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銀行・証券・保険:川西 洋/大和証券キャピタル・マーケッツ ヨーロッパリミテッド

新年おめでとうございます。


パリに着任して早半年以上も経ちました。このたび「新年特集・業界見通し」の大役を仰せつかりました。実際に着手しますと「ベテランの皆さまの手前、さて困った」というのが正直な感想です。そこで大味とはなりますが、広義な意味での金融セクターに関しまして、2019年のA「相場の手懸かり」とB「キーワード」について以下申し述べます。あくまでも私見です。

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A <相場の手懸かり>
① 2018年中に言われ続けていたのは、米国の金融政策の正常化に伴う新興国からの資金流出の懸念であったが、マーケットに不確実性をもたらしたのは米中の貿易摩擦であった(12月現在、追加関税の90日猶予の合意で問題は先送りのかたち)。

② 中国を現地取材した弊社アナリストや在香港の弊社セールスでは中国のサプライチェーンや消費者センチメントは相当打撃を受けていると観察。また弊社チーフエコノミスト(アジア担当)のケヴィン・ライは11月の経済指標を受けて「需要の前倒しが終わり、貿易戦争の打撃がついに顕在化した可能性」を指摘している。

③ 問題点はなにか:
1)2019年に入っても不確実性が長引く場合、米中貿易摩擦を長期的なイベントと判断して、企業ではグローバルに設備投資や雇用を抑制する可能性が考えられる。この点、弊社アジアパシフィック・チーフストラテジストのポール・M・キトニーのコメントは次のとおり:「2019年初頭の短い期間に貿易協定や停戦が実現しなければ、市場の注目が2019年後半から明らかになると見込まれる世界経済の減速へと移る公算は大きい」(注1)。
2)一方、経済が強ければ金利上昇するはずの米国金利が抑え込まれているのは、拡張的な財政政策の効果剥落をマーケットが織り込んでいるからと捉えることができるかも知れない。
3)また弊社チーフマーケットエコノミストの岩下真理の言葉を借りると、「2019年は世界的な減速に向かう、足元は曲がり角にある。日本の景気は足踏み状態(緩やかな景気回復局面は継続)ながらも、海外リスクに振り回される、迷い道にいる状況となりそうだ」。

④ そうであれば、グローバルに長期金利に低下圧力が強まり、株価の観点より、金融セクター全体を上向きに動かすきっかけが見出しにくくなる可能性も考えられる。12月には日本・アジア株運用のパリの機関投資家の間では、総じて慎重スタンスを保っていた。

B <キーワード>
① 趣向を変え、2019年の金融セクターにおいて注目すべきキーワードとして、引続き「SDGs」が挙げられる。

② 「SDGs」(Sustainable Development Goals)とは、ご存じの方も多いかと思うが、2015年の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」として、世界150ヵ国を超える加盟国の参加のもと採択したイニシアティブ(注2)。

③ 「SDGs」の特色として、次の3点:
1)グローバルに顕在化している幅広い問題をカバーし、発展国だけではなく全ての国にとっての目標であること、
2)現世代だけではなく、将来世代にもフォーカスしていること、
3)各国政府・国際機関に対処を委ねているのではなく、企業など様々なステークホルダーの積極的な関与も求められていること。

④ 環境・社会などへの影響力をもつ企業が「SDGs」に示されている課題の解決に向けて取り組まなければならないのは自明なことかも知れないが、投資家との関係で述べると、「SDGs」とESG(Environmental・Social・Governance)投資の視点(環境・社会・企業統治の非財務的視点での企業価値の評価)はオーバーラップする。投資家による企業の中長期的な持続的発展に対する評価において、「SDGs」精神に則り、企業自身が社会的課題の解決に結びつけるか、一方では企業行動が社会的阻害になっていないかセルフチェックを行い、目に見えるかたちでの課題解決や社会貢献が一層求められているのではないかと思われる。

⑤ 金融セクターでも様々な取り組みがみられるが(注3)、ESGを考える上でも、世界共通の指標として「SDGs」の枠組みが浸透するのではないかと思われる。この半年のあいだに日系・アジア企業とパリの機関投資家の面談に多数同席したが、ESG・「SDGs」に関する対話は頻繁に行われていたと認識している。

⑥ 大和証券グループでは、SDGs推進委員会を設置するなど経営戦略にとり込み、「企業の経済的価値の追求と社会的課題の解決を両立すること」に取り組んでいます。

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以上、テーマに沿った私の見方を述べさせていただきました。

新年にあたり、皆さまにとって良きお年になりますようお祈り申し上げます。



<注釈>
(注1)キトニーの前提となる見方には、主要各国の財政政策の余地が小さく、金融政策の柔軟性が限定的であること、また中国に関しては「まだGFC(※世界金融危機)後の行き過ぎた信用拡大の後始末をしている上、対米貿易戦争の最中に人民元がマクロ安定化ツールの武器として認識されないよう注意を払っている。その結果、中国の政策による金融緩和は限定的となる公算が大きい」という捉え方があります。(『アジア株ストラテジー:2019年アウトルック:景気サイクルと貿易戦争の衝突』、大和証券、2018年12月6日)

(注2)「SDGs」は17の目標と169の達成基準で構成され、目標の中には、「貧困をなくそう」、「ジェンダー平等を実現しよう」、「働きがいも経済成長も」、「気候変動に具体的な対策を」などが掲げられています。(詳しくは、例えば、外務省ホームページ「JAPAN SDGs Action Platform」などをご参照ください)

(注3)以下、『ESGアップデート(創刊号)』(大和証券、2018年8月17日)からの引用です:
「国内3大金融グループ(三菱UFJ フィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ)は、2018 年7月にそれぞれ発行した統合報告書(ディスクロージャー誌 本編)で、気候変動対策の新たな情報開示フレームワーク“TCFD”への対応を始めた。当該3社は従前からTCFDの趣旨に賛同の意を表しており、その対応時期と内容が注目されていた。」

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